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オーストラリアからの便り(1):アボリジニのおかれている状況

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私は8月1日に日本を出発してオーストラリアに旅立ちました。これから、何回か現地からの報告をしようと思います。すこし、難しくなるかもしれませんが、お許しください。

今回の調査旅行は、世界のほかの地域の先住民を研究する日本の人類学の仲間たちとともにオーストラリアの先住民であるアボリジニの町を訪ねます。その目的は、彼らの現状を視察してもらい、ほかの世界の人びととの比較を通じて、アボリジニに対する新たな視点を見いだそうというものです。
私たちは、この後、アボリジニを研究する豪日の研究者とのあいだで情報交換を行います。このプロジェクトは、昨年度も別の日本人の人類学者を招いて行われました。その成果は、いずれ、皆さんの目にも触れることになると思います。

さて、皆さんもアボリジニのことは教科書で学んでおられると思いますが、簡単におさらいしておきましょう。

アボリジニの人びとはオーストラリアの人口約2100万人のうち2パーセントにとどまります。しかし、オーストラリアへは、約5万年前、人類として初めて大陸に足跡を記しました。一方、ヨーロッパからの移民たちの歴史が始まったのは約220年前のことです。
「最初のオーストラリア人」であるアボリジニからすれば、とても最近のことであることはお分かりでしょう。「最初のオーストラリア人」であるアボリジニたちは、オーストラリアの大地の自然を理解し、自然のなかで狩猟採集生活を行ってきました。しかし、ヨーロッパからの移民が始まっていこう、オーストラリア社会の主流となったのは、「最初のオーストラリア人」であるアボリジニではなく、ヨーロッパ系の人びとでした。そうしたなかで、「最初のオーストラリア人」たちは、大変不幸な目にあってきています。独自の文化を捨てて、主流 社会の人びとへの同化が求められ、親たちと引き離された子供たちもあったのです。

主流社会のなかのマイノリティ(少数者)であるアボリジニたちは、世界やオーストラリア国内における政治状況に翻弄されてきたといえるでしょう。たとえば、世界でマイノリティへの尊重のながれがうまれると、彼らのひどい待遇は多少改善されることになりました。1968年のオーストラリアでの国民投票において、彼らのオーストラリア国民としての地位が確立されたのです。
しかし、それでもなお、彼らのおかれている厳しい状況は変わりません。むしろ、さらに厳しくなったといえるでしょう。たとえば、教育について取り上げてみましょう。オーストラリアの学校教育では中心となる言語は英語です。世界からの移民も同様ですが、アボリジニも元々、独自の言語を持っていた訳です。しかし、彼らが国民の権利としての義務教育を受けようとすると、英語による学習を受け入れなければなりません。オーストラリアの教育体制のなかで一時、バイリンガル教育が導入されていたこともあります。しかし、最近では、様々な事情から、バイリンガル教育が行われなくなってきています。
日常生活ではアボリジニたちは独自の言語を用いているのですが、学校では英語を使うことになります。もちろん、卒業して仕事を始めれば、英語が話せることは有利であることは確かです。だから、英語を学ぶことの重要性は高いのです。
ここで、日本のことについて、考えてみましょう。皆さん方は、日本語をどこでも使うことになれっこになっていて、場所に応じて言語を使い分けることの困難性は感じることはないと思います。しかし、学校では英語だけで学び、日本語は家族や地域の人たちとの会話でだけ使うという立場だったらどうでしょう。学校で学んだことを家に帰って家族の人たちと話そうとしても、もし、家族のなかに英語を理解しない人がいると共通の話題として学校の話を持ち出すことが困難になることがわかるでしょう。

だからといって、かわいそうな人びとであるので、彼らのおかれている状況を変えて、彼らの文化を守っていかなければならない、との見方だけで彼らの生活をとらえることはできないでしょう。もちろん、彼らのおかれている状況は 厳しいのですが、彼ら自身、芸術活動や環境保護、観光などに関連して、独自の活動を始めていて、これからも、注目していかなければならないと思います。

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